抜歯後そのまま放置するリスクは?歯を抜いた後の治療方法についても解説

抜歯をした後は歯を失った部分を補うために、ブリッジ・入れ歯・インプラントのいずれかの治療を行うのが一般的です。
しかし中には「歯医者に行くのが怖いから」「抜歯後の治療について説明がなかった」などの理由から、治療せずに放置してしまうケースもあります。
この記事では、抜歯後に治療せずに放置してしまうリスクについて解説します。
抜歯後の3つの治療方法のメリット・デメリットもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
抜歯後にそのまま放置するリスク

抜歯後に治療せずにそのまま放置するリスクとして、以下の8つが挙げられます。
- 抜歯した歯と噛み合う歯が伸びてくる
- 抜歯した両隣の歯が傾いてくる
- 噛み合わせが悪くなる
- 見た目が悪くなる
- 歯ぐきの位置が下がる
- 顔の輪郭が変化する
- 咀嚼障害により胃腸への負担が増加する
- 発音に影響が出る
ここでは上記8つのリスクについてそれぞれ解説します。
抜歯した歯と噛み合う歯が伸びてくる
抜歯した歯をそのまま放置すると、噛み合う歯が伸びてきてしまうリスクがあります。
上下の歯がそれぞれしっかりと噛み合っているのが正常な状態ですが、歯を抜くと噛み合う歯が失われることにより刺激がなくなり伸びてきてしまいます。
正確には歯自体が成長して伸びるわけでなく、骨の中に埋まっている部分が出てくるのです。
このように根っこから伸びてしまった歯は元の状態に戻すのが難しくなります。
また抜歯した部分に人工歯を入れる際にも処置が難しくなるため、噛み合う歯が伸びてくる前に抜歯後の治療を早急に行うべきといえるでしょう。
抜歯した歯の両隣の歯が傾いてくる
抜歯をすると歯と歯の間にスペースができ、抜いた歯の両隣の歯が傾いてくることがあります。
歯はお互いに力をかけあうことによってその位置を保っていますが、抜歯することで支えを失ってしまい、できたスペースに向かって徐々に動いて傾いてくるのです。
両隣の歯が傾くとスペースがふさがれるため、抜歯したところに入れ歯やインプラントを入れようとしても上手く治療が進められません。
そのため傾いた歯をまっすぐにするための矯正治療が必要になり、治療費用はもちろん身体的な負担も増えることになります。
ちなみに歯列矯正治療は全体のバランスを見ながら進める必要があるため、一部の矯正だけでなく全体の治療が必要になることが多いです。
噛み合わせが悪くなる
噛み合う歯が伸びてきたり両隣の歯が傾いてきたりすることにより、口内全体の噛み合わせが悪くなるリスクがあります。
噛み合わせが悪くなると顎関節に過度な力がかかり、顎関節症を発症する恐れがあります。
顎関節症の代表的な症状は次の通りです。
- 顎関節が痛む
- 口が開きづらい
- 口を開け閉めするときに異音がする
また噛み合わせのズレは顎関節症の発症リスクを高めるだけでなく、身体のバランスが崩れる原因にもなり得ます。
顎関節は体の軸となっている背骨にも連動しており、全身のバランスに大きく関わっている部分です。
そのため顎関節のバランスが乱れると全身のバランスが乱れ、肩こりや頭痛を引き起こすこともあるのです。
見た目が悪くなる
抜歯したまま放置していると見た目が悪くなるデメリットがあります。
歯が抜けている状態はやはり見た目が悪く、口を開けて笑うことや周囲の人とのコミュニケーションを避けてしまう原因にもなり得るでしょう。
口元の審美性は人の印象に大きく影響する部分のため、抜歯後は早めに入れ歯やインプラントなどの治療をすることをおすすめします。
また噛み合わせのズレによって全身のバランスが乱れると姿勢が悪化することがあります。
姿勢の悪さも見た目に影響するため、人と会う仕事をしている方や周囲からの目を気にする方は注意が必要です。
歯ぐきの位置が下がる
抜歯をすると歯を支えている歯槽骨という骨が溶け、歯ぐきの位置が下がってきます。
上顎の歯を抜いた場合、上顎洞の下にある骨がインプラント治療ができないほど薄くなってしまっていることもあります。
この場合は骨を押し上げ再生するソケットリフト法や、骨補填材と人工骨を粘膜に埋め込むサイナスリフト法などの治療を行わなくてはいけません。
通常のインプラント治療よりも高度な手術法となるため、身体への負担が大きくなり、対応できる歯科医院も限られてきます。
顔の輪郭が変化する
抜歯したまま治療せず放置すると、顔の輪郭が徐々に変化します。
- 頬がこける
- 口元にシワができる
- 顎にたるみができる
奥歯を抜歯した場合は頬や顎のラインが内側に寄るため、頬がこけたり顎にたるみができたりすることがあるのです。
前歯を抜歯した場合は口元にシワができる原因にもなります。
上記のような変化を避けるためには、抜歯後、期間を空けずに歯を失ったスペースを補う治療が必要です。
咀嚼障害により胃腸への負担が増加する
抜歯後に治療せず放置することで噛み合わせが悪化し、上手く食べ物を咀嚼できなくなることで胃腸への負担が増加します。
咀嚼が上手くできないと唾液の分泌量が不足し、消化が妨げられる原因になるのです。
また唾液の分泌量の低下は消化を妨げるだけでなく、虫歯や歯周病の発症リスクを高め、口臭の原因になる恐れもあります。
発音に影響が出る
歯を失ったまま放置すると、歯のない部分から空気が漏れて、発音が聞き取りにくくなることがあります。
特に前歯を抜歯した際にこの症状が顕著に現れやすく、自分の話し方を過度に気にするようになり、コミュニケーションに悪影響が出る恐れもあります。
抜歯した後の治療方法

抜歯した後の治療方法はブリッジ・入れ歯・インプラントの3つがあります。
ブリッジ | 入れ歯 | インプラント | |
治療内容 | 抜歯した歯の両隣の歯を支えに人工歯を橋のように架けて装着する | 人工の歯を用いた取り外し可能な装置を装着する | 顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を装着する |
メリット | ・保険適用で治療できるため費用を抑えられる ・外科手術が必要ないため身体への負担が少ない ・取り外しの手間がない ・治療期間が短い | ・保険適用で治療できるため費用を抑えられる ・外科手術が必要ないため身体への負担が少ない ・取り外しできて手入れが容易 | ・天然歯と同じような噛み心地を取り戻せる ・異物感が少ない ・審美性が高い |
デメリット | ・両隣の歯の寿命が縮まる ・人工歯の下に汚れが溜まりやすい | ・異物感があるため食事や会話に違和感が出やすい ・自費診療の場合は費用が高額になる ・保険診療の場合は装置のバネが目立ちやすい | ・自費診療のため費用が高額 ・外科的手術が必要となる ・治療期間が長い |
ここでは上記3つの治療方法についてそれぞれ解説します。
ブリッジ
ブリッジは、抜歯した歯の両隣の歯を支えにして人工歯を橋のようにかけて装着する治療方法です。
ブリッジのメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | ・保険適用で治療できるため費用を抑えられる ・外科手術が必要ないため身体への負担が少ない ・取り外しの手間がない ・治療期間が短い |
デメリット | ・両隣の歯の寿命が縮まる ・人工歯の下に汚れが溜まりやすい |
ブリッジは保険適用で治療可能なものもあり、自費診療のみのインプラントと比べると費用をおさえやすい治療方法といえます。
また入れ歯のように取り外しの手間がないのも大きなメリットです。
しかし装着した人工歯の下は汚れが溜まりやすく不衛生な状態になりやすいため、虫歯や歯周病のリスクがあります。
ブリッジは審美性や費用の安さを重視する方におすすめの治療方法です。
入れ歯
入れ歯は、人工の歯を用いた取り外し可能な装置を装着する治療方法です。
次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | ・保険適用で治療できるため費用を抑えられる ・外科手術が必要ないため身体への負担が少ない ・取り外しできて手入れが容易 |
デメリット | ・異物感があるため食事や会話に違和感が出やすい ・自費診療の場合は費用が高額になる ・保険診療の場合は装置のバネが目立ちやすい |
入れ歯は保険診療でつくるものと自費診療で作るものがあり、保険診療の場合は費用をおさえて作成できます。
しかし歯に引っ掛けるための装置のバネが目立ちやすく、審美性を重視する方には不向きです。
審美性を重視する場合は、費用がやや高額にはなりますが自費診療の入れ歯がおすすめです。
目立ちにくい素材を使用し、さらに口内に入れたときの違和感も少ない入れ歯を作成できます。
入れ歯は費用の安さやメンテナンスの容易さを重視する方におすすめです。
インプラント
インプラントは、顎の骨に人工歯根を埋め込んでその上から人工歯を装着する治療方法です。
以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | ・天然歯と同じような噛み心地を取り戻せる ・異物感が少ない ・審美性が高い |
デメリット | ・自費診療のため費用が高額 ・外科的手術が必要となる ・治療期間が長い |
インプラントは人工歯根を埋め込む治療法のため、天然歯と同じような噛み心地を取り戻せるのが大きなメリットです。
異物感が少ないため、入れ歯やブリッジなどの治療法で懸念される口内の違和感を抑えられます。
しかし保険が適用されない自費診療のため、費用が高額になる点には注意が必要です。
機能性や審美性を重要視する方におすすめの治療方法といえます。
抜歯後放置することに関するよくある質問

抜歯後放置することに関するよくある質問をまとめました。
- 歯が1〜2本なくても噛めるというのは本当?
- 抜歯後何年も経った後でも治療はできる?
ここでは上記質問についてそれぞれ回答するため、ぜひ参考にしてみてください。
歯が1〜2本なくても噛めるというのは本当?
歯が1〜2本程度なくても噛めるという考え方がありますが、これはあくまでも短期的な口の機能としての話です。
抜歯後そのまま放置していると、噛み合わせが徐々にずれてきて食べ物を咀嚼しづらくなります。
1〜2本程度大丈夫と放置するのではなく、すぐに失った歯を補うための治療を行うべきでしょう。
抜歯後何年も経った後でも治療はできる?
「怖くて歯医者に行けなかった」「抜歯前にその後の治療法に関する説明がされなかった」などの理由から、抜歯後に何も治療せず何年もそのままになってしまっている場合でも、治療可能です。
ただし、単純に失った歯を補う治療を行うだけでなく、矯正治療やより難易度の高い治療が必要になる可能性があります。
抜歯後すぐに治療を始めていれば上記のような追加の治療が発生するリスクを抑えられるため、歯科医師と十分に相談して抜歯後の治療計画を立てておきましょう。
まとめ
抜歯後そのまま放置すると噛み合わせが悪くなり、見た目の悪化や咀嚼障害、発音への影響などさまざまなリスクがあります。
上記のようなリスクを避けるためには、歯科医師と抜歯後の治療計画についてあらかじめ話し合っておくことが大切です。
抜歯後の治療方法としては、ブリッジ・入れ歯・インプラントの3つが挙げられます。
それぞれメリット・デメリットがあるため、自分の希望を伝えたうえで適した治療方法を選択しましょう。
平山歯科医院では、患者さんと同じ目線に立って一人ひとりの悩みに合った治療を提案しています。
抜歯から何年も経過してしまっている場合でも、症状や希望に適した方法を提案させていただきますので、お悩みの方はぜひ一度気軽にご相談ください。