顎関節症はどのくらいで治る?治療期間や再発の可能性について解説

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「顎関節症は全治までにどのくらいの期間がかかるんだろう?」「再発の可能性はあるのか?」などのお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

顎関節症は口を大きく開けづらくなったり、口を開け閉めする際に異音が生じたりする病気です。

顎関節症の患者さんの多くは1年以内に症状が改善されており、症状が軽ければ2週間から3か月程度で改善がみられることもあります。

この記事では、顎関節症の治療期間について詳しく解説します。

再発の可能性や治療せずに放置しておく危険性についてもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

顎関節症とは

頭蓋骨の模型

顎関節症は、顎を動かす筋肉や関節に異常が生じる病気です。

口を開け閉めするときに顎関節や筋肉が痛む、口を思うように開けられない、異音が生じるなどの症状が現れます。

顎関節症の主な症状

顎関節症は症状ごとに以下の4つのタイプに分類されます。

  • 咀嚼筋痛障害(I型)
  • 顎関節痛障害(Ⅱ型)
  • 顎関節円板障害(Ⅲ型)
  • 変形性顎関節症(Ⅳ型)

ここでは上記4つのタイプの症状についてそれぞれ解説します。

咀嚼筋痛障害(I型)

咀嚼筋痛障害は、咬筋や側頭筋などの顎の筋肉を使いすぎることにより痛みが出るものです。

咬筋や側頭筋は使いすぎるとこめかみ部分に痛みを感じるため、頭痛を訴える患者さんも少なくありません。

顎関節痛障害(Ⅱ型)

顎関節痛障害は、関節靭帯に異常が生じるものです。

無理に大きく口を開けたり、固いものを食べたりすることで発症します。

歯ぎしりや食いしばりで発症することもあるため、無意識の癖がある方は注意が必要です。

顎関節痛障害はいわゆる顎の捻挫により生じるもののため、あくびを控えたり食事は小さくカットしたりするなど、無理に大きく口を開けないように安静に過ごすことが大切です。

顎関節円板障害(Ⅲ型)

顎関節円板障害は、上顎と下顎の骨の間に存在する関節円板の位置がずれてしまうものです。

関節円板はクッションの役割を果たす組織で、位置がずれると異音が生じたり口を開けづらくなったりします。

口を開け閉めする際に生じる異音を『関節雑音』といい、この症状だけが現れている状態では特に治療の必要性はありません。

しかし口を開け閉めしづらくなる『開口障害』が現れたら、歯科医院または顎関節専門外来での治療が必要になります。

変形性顎関節症(Ⅳ型)

変形性顎関節症は下顎骨の変形により起こるものです。

他のタイプと異なり症状だけでは診断が難しいため、顎のレントゲン撮影をする必要があります。

一度変形した骨を元通りにすることは困難なため、マウスピース治療や開口訓練により痛みがない状態・十分に口が開く状態を目指します。

顎関節症の原因

顎関節症は原因を一つに特定することが難しく、様々な要因が複雑に絡み合って起こります。

顎関節症の原因となり得る要因は以下の通りです。

  • 解剖要因:顎関節や顎の筋肉の弱さ
  • 咬合要因:噛み合わせの問題
  • 精神的要因:精神的緊張や不安な気持ちの持続など
  • 外傷要因:打撲や転倒、交通外傷など
  • 行動要因:日常的な癖や食事、睡眠、スポーツ、楽器演奏や歌唱、発声など

顎関節症患者の中でも特に多くみられるのが、上下の歯を接触させるTCH(歯列接触癖)という癖です。

歯と歯の間にはわずかにすき間が生じているのが通常の状態ですが、無意識に上下の歯を接触させる癖がある人の場合、顎関節症になりやすいとされています。

また精神的要因によって筋肉が緊張することで顎関節症につながることもあります。

このように顎関節症には様々な原因があるため、自分の生活習慣や悪い癖を見直すことが大切です。

顎関節症の治療期間は?

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顎関節症の治療期間は重症度により異なりますが、約7割の方が1年以内に症状が改善しています。

初期治療による症状の消失と機能の回復は2週間から3か月程度です。

初期治療で症状が改善されない場合は画像診断検査や専門的な対処が必要となり、専門医のいる医療機関を紹介してもらうことになります。

また痛みがない場合は治療をしなくても症状が改善される場合がありますが、様子を見ているうちに症状が悪化することもあるため注意が必要です。

もし痛みがひどくなったらすぐに歯科医院を受診し、専門的な治療を受けるようにしましょう。

顎関節症の治療は関節可動化訓練をはじめとした理学療法や内服薬の処方などが中心となりますが、症状がひどい場合は手術が必要になる場合もあります。

いずれにしても医師による診断のもと適切な治療を受けることが大切なため、顎関節に違和感が生じたら早めに歯科医院を受診しましょう。

顎関節症は再発する可能性はある?

顔の骨格のデッサン

顎関節症は症状が改善しても、再発する可能性があります。

特に顎関節の変形性変化が強い場合はその可能性が高まるため注意が必要です。

顎関節は一度傷つくと元に戻ることはなく、治療によって症状が改善されても、良くない生活習慣や癖が残っていると再度痛み出すことがあります。

そのため顎関節症の治療を行う際は、セルフケアにより生活習慣を根本から見直すことが大切です。

例えば以下のような癖は顎関節の原因となることがあるため、治療と合わせて改善していく必要があります。

  • 歯ぎしりや食いしばり
  • 偏咀嚼(片側の歯で噛む癖)
  • ほおづえ
  • うつ伏せ寝
  • 口呼吸
  • 猫背など

上記のような癖は自分で意識して改善できるものもあれば、専門的な治療を受ける必要があるものもあります。

歯ぎしりや食いしばりはマウスピースの使用により改善が期待できるため、一度歯科医師に相談してみると良いでしょう。

顎関節症を放置する危険性

目覚まし時計

顎関節症を治療せずに放置すると日常生活に支障が出るほど症状が悪化する恐れがあります。

顎関節症の方の多くに関節円板(クッションのような組織)のズレが見られますが、放置すると徐々にズレが大きくなり、口が開けづらくなったり顎が疲れやすくなったりすることがあるのです。

また噛み合わせのズレは全身のバランスを崩すことにもつながり、顎関節だけでなく全身に症状が広がる恐れもあります。

顎関節症を放置することで起こり得る全身症状は以下の通りです。

  • 頭痛
  • 目・鼻・耳の痛み
  • 肩こりや腰痛
  • 手足のしびれ
  • めまい

また顎関節症は顎変形症の前兆の場合もあるため、放置しておくのは危険です。

顎変形症は上下の顎の変形により噛み合わせが大きくずれる病気で、肩こりや腰痛、頭痛、睡眠時無呼吸などの症状が出る場合があります。

顎関節症の疑いがある場合は、放置せず早めに専門医に相談しましょう。

顎関節症に関するよくある質問

Q&A

顎関節症に関するよくある質問をまとめました。

  • 顎関節症の治療方法は?
  • 歯並びや噛み合わせを治せば顎関節症は完治しますか?
  • 顎関節症の治療で肩こりや腰痛は改善しますか?
  • 顎関節症でやってはいけないことはありますか?

ここでは上記4つの質問についてそれぞれ回答します。

顎関節症の治療方法は?

顎関節症には以下のような治療方法があります。

  • 運動療法:顎の筋肉や靭帯にアプローチするストレッチを行う
  • 物理療法:マッサージやレーザー照射、電気刺激により筋肉をほぐす
  • 薬物療法:顎関節や筋肉の痛みを和らげる消炎鎮痛剤を服用する
  • スプリント療法:マウスピースを装着して歯ぎしりや食いしばりによる顎関節への負担を軽減する
  • 噛み合わせ治療:被せ物の調整や作り直しなどにより噛み合わせを改善する
  • 矯正治療:噛み合わせが広範囲にわたって乱れている場合は歯列全体の矯正を行う

原因や症状を診たうえで適切な治療を選択します。

歯並びや噛み合わせを治せば顎関節症は完治しますか?

顎関節症は複数の要因が絡み合って起こるため、歯列矯正による歯並びや噛み合わせの治療で必ず症状が改善されるとは言い切れません。

他の治療法も提案してもらったうえで、慎重に検討するといいでしょう。

顎関節症の治療で肩こりや腰痛は改善しますか?

顎関節症が原因で肩こりや腰痛が引き起こされることがありますが、顎関節の治療により必ずしも症状が改善されるとは限りません。

肩こりや腰痛が引き起こされる原因を突き止め、原因に合った治療を受ける必要があります。

顎関節ではなく肩こりや腰痛の改善が目的の場合は、不必要な検査を避けるためにも整形外科または内科を受診するとよいでしょう。

顎関節症でやってはいけないことはありますか?

顎関節症でやってはいけないことは以下の通りです。

  • 偏咀嚼(片側の歯で噛む癖)
  • 顎に負担のかかる姿勢(ほおづえやうつ伏せ寝)
  • TCH(歯列接触癖)
  • 歯ぎしりや食いしばり
  • 長時間ガムを噛む
  • 市販マウスピースの使用
  • 自己流のストレッチ

偏咀嚼やほおづえ、うつ伏せ寝、TCH(歯列接触癖)は顎関節に負担をかける行動で、顎関節症の症状を悪化させる恐れがあります。

また市販マウスピースの使用や自己流のストレッチなどのいわゆるセルフ治療も、かえって症状を悪化させる原因になるため注意が必要です。

顎関節症の疑いがある場合は自己判断でセルフ治療を行うのではなく、きちんと専門的な検査と診断を受けて適切な治療を受けましょう。

まとめ

顎関節症の治療期間は1年程度を目安に考えておくと良いでしょう。症状によっては2週間から3か月程度で改善される場合もあります。

顎関節症は顎関節の違和感から始まり、放置すると徐々に症状が悪化して日常生活に支障が出ることもあります。

頭痛や目・鼻・耳の痛み、肩こり、腰痛、手足のしびれ、めまいなどの全身症状を引き起こすこともあるため、顎関節に違和感が生じたらなるべく早めに歯科医院を受診しましょう。

平山歯科医院では治療前に患者さんの要望や不安をしっかりと伺ったうえで、適切な治療方法のご提案を行っております。

顎関節症に関して不安なことがある方は、ぜひ一度当院までご相談ください。

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