顎関節症とは?症状や治療方法について解説

顎関節症は、顎を開け閉めするときに痛みや違和感、「カクカク」「ポキポキ」といった異音が生じる病気です。
顎関節症は生まれつきの骨格、噛み合わせの乱れや顎の酷使、ストレス、日常生活の癖など様々な原因が重なることにより発症するのが特徴です。
この記事では顎関節症について詳しく解説します。
症状や原因、診断基準、治療方法などについてまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
顎関節症とは?

顎関節症とは、顎関節や咀嚼筋に痛みや違和感が生じる病気です。片顎のみの場合もあれば、両顎に症状が出る場合もあります。
ここでは顎関節症の定義や症状ごとの分類について解説します。
顎関節症の定義
日本顎関節学会によれば、顎関節症は「顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節音、開口障害、顎運動異常が主な症状として現れる障害の総称」と定義されています。
咀嚼筋痛障害や顎関節痛障害、顎関節円板障害、変形性顎関節症などが主な病態です。
顎関節疾患の中でもかかっている人の割合が多い病気ですが、歯科医院など病院で治療を受けている人は7~8%ほどだといわれています。
顎関節症は4つのタイプに分類される
顎関節症は症状によって以下の4つのタイプに分類されます。
- 咀嚼筋痛障害
- 顎関節痛障害
- 顎関節円板障害
- 変形性顎関節症
ここでは上記4つのタイプについてそれぞれ解説します。
咀嚼筋痛障害
咀嚼筋痛障害は、咬筋や側頭筋などの顎の筋肉の使いすぎによって起こるものです。
頬やこめかみに痛みが生じるのが特徴で、頭痛を訴える患者さんも少なくありません。
筋マッサージや顎の安静により症状の緩和が期待できます。
顎関節痛障害
顎関節痛障害は、関節靭帯に異常が生じるものです。
異常が生じる原因としては、無理に口を大きく開けたり固いものを食べたりすることが挙げられます。
また、歯ぎしりや食いしばりも原因になるため、無意識に歯を食いしばってしまう癖がある方は注意が必要です。
口を大きく開けずに食事できるように食材を小さくカットしたり、あくびは控えたりするなどして、可能な限り顎を安静にして過ごす必要があります。
顎関節円板障害
顎関節円板障害は、上顎と下顎の間に存在する関節円板に異常が生じるものです。
関節円板の位置がずれると「カクカク」「ポキポキ」といった関節雑音が生じるようになり、症状が悪化すると開口障害を引き起こします。
開口障害とは、口を開けづらくなったり、口を開け閉めする際に痛みが生じたりするようになるものです。
関節雑音のみであれば特に治療は必要ありませんが、開口障害が現れたら医療機関での治療が必要になります。
変形性顎関節症
変形性顎関節症は、下顎骨が変形することにより起こるものです。
このタイプに関しては症状だけで診断するのが難しいため、顎のレントゲン撮影が必要になります。
50歳以上の人に多く見られる症状で、滑膜炎(関節の中にある滑膜に血管や細胞が増えて厚く腫れてしまう病気)などの炎症を伴う場合もあるため注意が必要です。
顎関節症の主な症状

顎関節症の主な症状は以下の通りです。
- 顎が痛む
- 口を大きく開けられない
- 口を開けると異音が鳴る
ここでは上記4つの症状についてそれぞれ解説します。
顎が痛む
顎関節症になると、口を開け閉めする際に顎が痛むようになります。
痛む場所としては「耳の前の顎関節があるところ」「片側の顔から頭まで」「頬やこめかみの筋肉」などです。
これは顎の付け根部分にある下顎頭が動くことによる顎関節痛と、咬筋や側頭筋などの咀嚼筋が活動することによる筋痛が原因です。
- 顎関節痛:顎関節周囲の軟組織が炎症を起こすことによる痛み
- 咀嚼筋痛:様々な病態によって生じるもので、局所的で鈍く疼くような痛みが特徴
顎関節痛と咀嚼筋痛はそれぞれ治療方法が異なるため、歯科医師による鑑別診断が必要になります。
痛い時は無理やり動かさず安静にし、早めに歯科医院を受診しましょう。
口を大きく開けられない
口を大きく開けられなくなったり、口を開ける際に引っ掛かりを感じるようになったりすることを開口障害といいます。
自分の指の人差し指から薬指までの3本を縦にして口に入るのが、顎関節の正常な状態です。
指3本を縦に入れるのが辛い場合は、顎関節や咀嚼筋に何らかの異常が生じている可能性が高いといえます。
開口障害の原因は筋性、関節円板性、関節痛性、癒着などが挙げられますが、突然口が開けづらくなった場合は関節円板のズレによるものと考えられます。
少しづつ時間をかけて開けづらくなってきた場合は、筋性によるものと診断されることが多いです。
また口を開けたときに引っかかりを感じる場合は変形性顎関節症の疑いもあるため、一度歯科医院で診てもらったほうが良いでしょう。
口を開けると異音が鳴る
口を開けたときに「カクカク」「ポキポキ」といった異音が生じることを関節雑音といいます。
関節雑音は関節円板のズレによって生じることが多いですが、下顎頭や関節窩、関節円板の変形が原因となっていることもあります。
異音が鳴るだけであれば治療の必要はありませんが、痛みを伴うようになったらなるべく早めに歯科医院を受診しましょう。
顎関節症の原因はさまざま

顎関節症は複数の要因が絡み合って起こるもののため、原因を一つに特定するのは難しいです。
顎関節症を引き起こす原因になるものとして、以下が挙げられます。
- 歯ぎしりや食いしばり
- 噛み合わせの乱れ
- 顎の酷使
- ほおづえ
- うつ伏せね
- 偏咀嚼(片側の顎ばかり使って咀嚼する)
- 事故などによる外傷
- ストレス
- TCH(歯列接触癖)
顎関節症の発症リスクを高める噛み合わせの乱れは、歯並びの乱れや被せ物や入れ歯の不適合、歯の摩耗など様々な原因が考えられます。
虫歯による歯の変形も噛み合わせのバランスを崩す原因となり得るため、虫歯の疑いがある方は注意が必要です。
顎関節症の診断基準

顎関節症の基本的な診査方法は以下の通りです。
開口量測定 | 正常な開口量である40mmを基準として、自力最大開口量と強制最大開口量(術者が強制的に開口させる開口量)の差を診る方法 |
下顎頭圧痛および関節頭運動状況診査 | 下顎外側中央部に指を置いて少しずつ力を加えたときに圧痛があるか、大きく口を開け閉めした際に下顎頭が正常に動いているかどうかを診査する方法 |
下顎マニピュレーション下顎頭滑走審査 | 術者が患者さんの関節部を触りながら下顎を片方ずつ前方・後方に限界まで牽引し、下顎頭の動き具合や痛みを診る方法 |
咬筋圧痛診査 | 術者が患者さんの頬部に指を置いて力を入れながら、咬筋の凹凸や固さを調べ、筋肉の大きさに左右差や痛みがないかを診査する方法 |
画像診断 | レントゲンやMRI、CTなどの画像診断により診査する方法 |
顎関節症の診査方法は上記のように複数の種類があり、いくつかの診査結果を組み合わせて総合的に診断します。
顎関節症の治療方法

顎関節症の主な治療方法は以下の通りです。
- 理学療(運動療法・物理療法)
- 薬物療法
- 噛み合わせ治療
- スプリント療法
- 日常生活の癖の改善
ここでは上記6つの治療方法についてそれぞれ解説します。
理学療法
理学療法には「運動療法」と「物理療法」があります。
運動療法
運動療法とは、筋肉や靭帯にアプローチする顎関節のストレッチを行う治療方法です。
顎関節の可動範囲を大きくする下顎可動化訓練や、疲れやすい筋肉を鍛えて耐久性の向上を図る筋肉増強訓練などがあります。
いずれのストレッチ・訓練も、歯科医師の指導のもと正しい方法で実践することが大切です。
物理療法
理学療法は、マッサージやレーザー照射による顎関節や咀嚼筋の運動機能や能力の回復、鎮静を目的に行われる治療方法です。
ホットパックによる温罨法や筋肉に電気刺激を与える低周波治療などがあります。
理学療法には様々な療法が存在し、歯科医院によって治療方法が異なります。
薬物療法
薬物療法は、薬の服用によって症状の改善を図る治療方法です。
顎関節症の治療では、主に以下の3つの薬のうち患者さんの症状に合わせたものが処方されます。
- 鎮痛消炎剤(非ステロイド系鎮痛消炎剤):靭帯や筋肉の炎症、痛みを緩和する
- 筋弛緩剤(塩酸トルペリゾン製剤):筋肉にコリや痛みが出ている場合に効果的
- 精神安定剤(ジアゼパム製剤):睡眠の改善による歯ぎしりの減少、ストレスの減少や筋弛緩作用が期待できる
患者さんの症状によっては、局所麻酔剤や副腎皮質ホルモン剤を注射する場合もあります。
噛み合わせ治療
噛み合わせ治療は、噛み合わせが崩れている部分を整える治療方法です。
歯が抜けている場合はインプラント・入れ歯・ブリッジで補い、被せ物が合っていない場合は形の調整や作り直しを行います。
噛み合わせが悪いのが一部分だけでなく広範囲に及ぶ場合は、矯正治療が必要になるケースもあります。
スプリント療法
スプリント療法は、マウスピースを装着することで顎関節や咀嚼筋にかかる負荷を軽減する治療方法です。
主に歯ぎしりや食いしばりの癖がある方に有効な治療方法で、歯のすり減りを防ぐ効果も期待できます。
日常生活の癖の改善
日常生活の癖を改善することは、顎関節症を治療するうえでとても重要です。
日常生活での悪い癖を長期間続けていると、顎関節症の発症の原因となったり症状を悪化させたりすることがあります。
顎関節や筋肉に悪影響を及ぼす日常生活の癖としては、以下のようなものが挙げられます。
- 無意識にかみしめる癖
- 頬杖をつく
- 固い食べ物を好んで食べる
- 猫背
- うつ伏せ寝など
歯ぎしりや食いしばりの癖など自分で意識するだけでは改善が難しい場合もあるため、歯科医師と相談しながら改善を目指しましょう。
まとめ
顎関節症は様々な原因が複雑に絡み合うことによって発症しますが、中でも噛み合わせの異常や歯ぎしり、食いしばりの影響が大きいとされています。
その他にも、頬杖をつく、うつ伏せで寝る癖など、普段意識していなくても顎関節や顎の筋肉に過度な負荷がかかる癖をしてしまっている方が多くいます。
口を開け閉めしづらくなったり痛みを感じたりするようになったら顎関節症が疑われるため、なるべく早めに歯科医院を受診しましょう。
平山歯科医院では一般歯科や矯正歯科、口腔外科など様々な診療に対応しており、顎関節症の様々な原因に対し適切な治療を行うことが可能です。
患者さん目線に立った丁寧なカウンセリングを行っているため、顎関節症の疑いがある方や口内トラブルでお悩みの方は気軽にご相談ください。