歯周病が原因で体調不良になる?全身の健康状態に影響を及ぼすことも

患者に説明する医師

歯周病は歯茎や周辺組織に炎症を起こす病気ですが、進行すると全身の健康に悪影響を及ぼすことがあります。

狭心症や心筋梗塞などの生命活動を脅かす病気の発症リスクを高める原因にもなり得るのです。

この記事では、歯周病に関係する病気について詳しく解説します。

歯周病を悪化させる原因についてもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

歯周病が原因で体調不良になることがある

体調不良を訴える患者

歯周病は口内の健康を損なうだけでなく、全身の健康にも影響し、体調不良を招くことがあります。

歯周病は歯と歯茎の間(歯周ポケット)で増殖した細菌により歯茎が炎症を起こしたり、歯槽骨(歯を支える骨)が溶かされて歯が抜け落ちたりする病気です。

歯茎の痛みや腫れが主な症状で、悪化すると徐々に歯を支える骨が溶かされていきます。

また、歯周病により作り出された炎症物質が血液に流れ込むと、血流にのって全身に運ばれ、様々な病気を引き起こすことがあります。

歯周病の症状については以下の記事で詳しく解説しているため、ぜひこちらも参考にしてみてください。

歯周病の症状とは?かかりやすい人の特徴や治療方法を詳しく解説

歯周病に関係のあるほかの病気

心臓を押さえる男性

歯周病によって発症したり症状が悪化したりする恐れがある病気として、以下が挙げられます。

  • 上顎洞炎
  • 狭心症・心筋梗塞
  • 脳梗塞
  • 糖尿病
  • 誤嚥性肺炎
  • 関節炎・腎炎
  • 骨粗鬆症
  • バージャー病
  • メタボリックシンドローム
  • 低出生体重児・早産児

ここでは上記の病気についてそれぞれ解説します。

上顎洞炎

上顎洞炎は上顎洞に歯周病の細菌が入り込んで炎症を起こす疾患です。

奥歯が原因になりやすく、奥歯が歯周病の場合は注意が必要です。

上顎洞炎の主な症状には以下のようなものがあります。

  • 歯の痛みや違和感
  • 目の下や頬骨の腫れ
  • 鼻水
  • 鼻づまり
  • 頭痛
  • 発熱
  • 倦怠感

上顎洞炎には鼻性と歯性がありますが、歯周病が原因で発症する歯性上顎洞炎は原因となっている歯のある片側だけで炎症が起こるのが特徴です。

狭心症・心筋梗塞

狭心症と心筋梗塞は、大人の心臓病の中でも特に多い病気です。

心臓の周りには冠動脈が巡っていますが、「狭心症」はこれが細くなった状態で、「心筋梗塞」は詰まった状態です。

主に不適切な食生活や運動不足などの生活習慣によって動脈硬化が起き、それによって発症リスクが高まるとされますが、歯周病原細菌が血液に流れ込み血管内にプラーク(脂肪性沈着物)ができることで引き起こされるケースもあります。

狭心症と心筋梗塞はどちらも胸が締め付けられるような痛みが生じますが、心筋梗塞は痛みが長時間続くのが特徴です。

冠動脈が完全に閉塞すると心筋が壊死するため、命の危険があります。

脳梗塞

脳梗塞は、脳の動脈が閉塞することで血液が途絶えてしまい脳の神経細胞が壊死する病気です。

脳梗塞の主な症状は以下の通りです。

  • 片方の手足の麻痺やしびれ
  • 呂律が回らない
  • 言葉が出てこない
  • めまい
  • 意識障害

脳梗塞は脳の血管内でプラークが詰まったり、頸動脈や心臓からプラークが流れてきたりすることで発症します。

歯周病の人は健康な人よりも2.8倍脳梗塞になりやすいともいわれています。

これは歯周病原細菌が血液に入り込み、血液を凝固させてしまうことがあるためです。

歯周病が重症化するほどこのリスクが高くなります。

糖尿病

糖尿病は、肝臓から出るホルモンであるインスリンが十分に働かず、血液中のブドウ糖が増えてしまう病気です。

主に以下のような症状があります。

  • 疲労感
  • 手の乾燥やかゆみ
  • 頻尿
  • 目がかすむ
  • 性機能の問題
  • 急激な体重減少

糖尿病は歯周病の合併症の一つともいわれており、糖尿病の人はそうでない人と比べて歯周病の人が多いという疫学調査が複数あります。

歯周病になることにより糖尿病の症状が悪化し、歯周病治療によって糖尿病の症状が改善することも明らかになってきているのです。

歯周病菌は内毒素(細菌の細胞壁に含まれる毒物)をまき散らし、血糖値に悪影響を及ぼします。

血液中の内毒素はインスリンの働きを邪魔してしまうため、歯周病と糖尿病は相互に悪影響を及ぼすと考えられています。

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎は、食べ物や口腔内の細菌を誤って食道ではなく気管に飲み込んでしまうことにより発症する病気です。

老化や脳血管障害の後遺症などにより飲み込む機能が衰えると、口腔内の細菌や食べかすなどが誤って気管に入ってしまうことがあります。

特に免疫力の衰えた高齢者や脳血管障害を持つ高齢者に多く見られる病気です。

誤嚥性肺炎の原因となる細菌は歯周病菌が多いとされるため、予防するためには歯周病の予防・早期発見が重要になります。

関節炎・腎炎

関節炎や腎炎はウイルスや細菌の感染などによって引き起こされることもあります。

それぞれ以下のような症状があります。

  • 関節炎:関節内に炎症が起こる病気で、関節部分の腫れや痛みを引き起こす
  • 腎炎:血液をろ過する腎臓の糸球体に炎症が起こる病気で、血尿や蛋白尿を引き起こす

これらの病気の発症原因となる細菌の黄色ブドウ球菌や連鎖球菌の多くは、歯周病原性細菌に多く存在しています。

口腔内に存在する歯周病原性細菌が血液中に入り込むことにより、関節炎や腎炎が引き起こされることがあるのです。

骨粗鬆症

骨粗鬆症は、骨強度が低下することでもろくなり骨折しやすくなる病気です。

女性患者の割合が多く、骨粗鬆症患者の約90%を占めます。

歯周病が進行しやすい原因にホルモンの一種であるエストロゲンの欠乏が挙げられますが、骨粗鬆症の中にはエストロゲン分泌の低下によって発症する『閉経後骨粗鬆症』があります。

エストロゲンの分泌の低下によって全身の骨がもろくなり、歯を支える骨ももろくなってしまうため、この二つの病気は相互に関係性があるといえるのです。

エストロゲンの分泌量が低下すると歯周病にかかりやすくなるため注意が必要です。

バージャー病

バージャー病は手足の末端の血管に炎症が生じ、血管が細くなったり詰まったりして、皮膚に痛みや潰瘍が生じる病気です。

主に30代〜40代の男性に多い傾向があり、患者のほとんどが歯周病であると診断されます。

歯周病原性細菌は血管内でプラークを作ることで塞いでしまうことがあるため、歯周病にかかるとバージャー病の発症リスクが高まるとされます。

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームは、内臓肥満に加えて高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさることで心臓病や脳卒中などの病気を引き起こしやすい病態のことです。

メタボときくと単に太っている人のことと勘違いする方がいますが、腹囲が大きいだけではメタボリックシンドロームには当てはまりません。

未だ詳しいメカニズムは解明されていませんが、歯周病由来の毒素であるLPSやタンパク質の一種であるTNFαによって脂肪組織や肝臓のインスリン抵抗性が増加し、血糖値上昇の原因になることが分かっています。

歯周病が重度になると動脈硬化や心筋梗塞発祥のリスクを高める原因にもなるため、注意が必要です。

低出生体重児・早産児

低出生体重児は体の機能が未熟な状態で生まれた赤ちゃんのことで、早産児は37週未満で生まれた赤ちゃんのことです。

これらは早産の既往や多胎妊娠、栄養不良、出生前のケア遅れ、感染症、高血圧などの原因で起こりやすいとされます。

また歯周病にかかっている場合、そうでない人と比べて低出生体重児や早産児のリスクが高まります。

これは歯周病原性細菌が血中に入り込み、胎盤を通して胎児に直接感染してしまうためです。

タバコやアルコールよりもリスクが高いとされるため、低出生体重児・早産児を防ぐためにも歯周病予防をしっかり行いましょう。

歯周病を悪化させる原因

火のついたタバコ

歯周病は急に症状が悪化するような病気ではなく、基本的に静かに進行します。

歯周病を悪化させる原因は以下の通りです。

  • 歯垢(プラーク)の増加
  • 生活習慣の乱れ
  • 歯ぎしりや食いしばり
  • 喫煙

ここでは上記の原因についてそれぞれ解説します。

歯垢(プラーク)の増加

歯周病の主な原因は歯垢(プラーク)です。

歯垢は歯と歯茎の隙間の歯周ポケットに溜まっていきます。

歯磨きが不十分だと歯垢が溜まり、やがて石灰化して歯石になります。

歯石になると歯磨きでは落とせなくなる関係で歯科医院での処置が必要になるだけでなく、歯茎の炎症の原因にもなるため注意が必要です。

生活習慣の乱れ

生活習慣の乱れは歯周病を悪化させる間接的な原因になります。

例えば以下のような習慣がある方は危険です。

  • 歯磨きの習慣がない
  • 磨き残しがある
  • デンタルフロスを行っていない
  • 食生活が乱れている
  • ストレスを溜め込んでいる

上記のように生活習慣が乱れてしまっている方は、歯周病予防のために改善していきましょう。

歯ぎしりや食いしばり

歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、歯周病の症状が悪化する恐れがあります。

歯に過度な力が加わることで、歯槽骨の骨吸収を促進してしまうためです。

歯ぎしりはマウスピースを装着して治療を行う方法が一般的です。

市販のマウスピースでは歯にぴったりと合わないため、歯科医院で自分の歯に合ったマウスピースを作成してもらいましょう。

喫煙

歯周病を悪化させる大きな原因として挙げられるのが喫煙です。

タバコの煙には化学物質が含まれており、これにより口腔内の血行や栄養不良を引き起こすことがあるためです。

喫煙者はそうでない人と比べて歯周病にかかりやすいとされるため、歯周病を予防するなら積極的に禁煙に取り組むべきといえるでしょう。

まとめ

歯周病は口腔内で発生する病気ですが、全身の健康状態に悪影響を及ぼし、体調不良を招くことがあります。

具体的には上顎洞炎や糖尿病、誤嚥性肺炎、バージャー病などの病気を引き起こす場合があります。

さらに狭心症や心筋梗塞といった命にかかわる病気を引き起こす恐れもあるのです。

早いうちから歯周病予防を取り入れ、定期検診を受けながら早期発見・治療を心掛けましょう。

平山歯科医院では、虫歯や歯周病を予防するための定期検診やブラッシング指導などを行っています。

患者さん一人ひとりの要望に合わせた治療を提案しているため、ぜひ気軽にご相談ください。

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