歯周病の原因は?発症のメカニズムや免疫力に影響する要素について解説

歯を見せる男性

歯周病は、細菌感染によって歯茎に炎症が起こったり、歯の骨を溶かしたりする病気です。

歯周病の原因となる細菌は人の口内に住む常在菌で、完全に除去することはできません。

この記事では、歯周病の原因やそのメカニズムについて詳しく解説します。

歯周病に対する免疫力に影響する要素などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

歯周病の発症メカニズム

口の中が描かれた絵を持つ女性

人々の口内には歯周病菌という常在菌が存在しています。

歯周病菌は存在しているだけで歯周病を引き起こすわけでなく、ある一定の条件が揃うことで身体が過剰な免疫反応を起こして発症するものです。

歯周病菌を放置しておくと徐々に増殖しますが、歯周病菌の中には悪い菌も存在しており、総数の増加に比例してこれも増えていくことになります。

歯周病菌の数が増えると体の免疫機能が働き、菌と戦い始めます。

しかし菌の数が増えて対応が追い付かなくなると、これまでは菌と戦っていた免疫が歯本体を攻撃し始めるようになります。

この過剰な免疫反応によって、歯を支えている骨が徐々に溶かされていってしまうのです。

歯周病の直接的原因と間接的原因

唇をめくって歯を見せる女性

歯周病の発生には直接的原因と間接的原因の2つがあります。

歯周病を発生させる直接的な原因は歯垢(プラーク)ですが、口腔内トラブルや生活習慣などが間接的な原因となることがあるのです。

ここではこれらの原因についてそれぞれ解説します。

直接的原因:歯垢(プラーク)

歯周病の直接的な原因となるのは、歯垢(プラーク)です。

歯垢は口内に住む細菌の塊で、磨き残しがあったり砂糖を過剰に摂取したりすると作られやすくなります。

1mgの歯垢の中には1億個以上の細菌が含まれるとされ、細菌が出す毒素によって歯肉が腫れたり出血しやすくなったりします。

また歯垢は粘着性が高いため、うがいだけで取り除くことは困難です。

歯垢が溜まると歯周病の原因になるだけでなく、虫歯を引き起こす恐れもあります。

間接的原因:口腔内トラブル

間接的な原因として挙げられるのが、口腔内トラブルです。

歯周病の間接的原因となり得る口腔内トラブルには以下が挙げられます。

歯石歯垢を放置しておくと歯石が形成され、歯茎の炎症の原因となります。歯石は歯磨きでは落とせないため、歯科医院でのクリーニングが必要です。
歯並び歯並びが悪いと磨き残しができやすくなるため、歯周病の直接的原因である歯垢が付きやすくなります。
口呼吸口呼吸が癖になっていると口の中が乾燥し、歯垢が溜まりやすい環境となってしまいます。
歯ぎしりや食いしばり歯ぎしりや食いしばりは歯や歯茎に過度に力がかかるため、炎症の原因となることがあります。
歯に合わない被せ物自分の歯に合わない被せ物をしていると歯磨きが不十分になり、歯垢が付きやすくなります。

歯周病を防ぐためには、上記のような口腔内トラブルを放置せずきちんと対処することが大切です。

間接的原因:生活習慣

生活習慣も歯周病を引き起こす大きな要因となります。

食生活不規則な食生活や栄養バランスの崩れた食生活を続けていると、歯や歯茎に悪影響を及ぼすことがあります。甘いものや柔らかいものは歯垢の原因にもなるため注意が必要です。
睡眠の質睡眠不足が続くと体の免疫力が低下する恐れがあり、歯周病の発症リスクを高める間接的原因になります。
ストレスストレスにより免疫力が低下したり食生活や歯磨きの習慣が変わったりすると、歯周病の発症につながることがあります。
喫煙喫煙をすると血管が収縮して歯茎の血行が悪くなるため、歯周病の発症リスクが高まります。

上記のように普段の何気ない生活習慣の積み重ねによって歯周病が引き起こされることもあるため、悪い生活習慣は改善するようにしましょう。

歯周病菌の特徴

歯茎の中の様子

歯周病は、歯周病菌という口内に住む細菌によって引き起こされます。

歯周病菌の特徴は以下の通りです。

  • 歯周ポケットに入り込んで増殖する
  • 歯垢(プラーク)を作って歯石を形成する
  • 常在菌のため完全に除去できない

歯周病菌は嫌気性菌といって空気を嫌う菌のため、歯周ポケットに入り込んで増殖します。

歯周ポケットは歯と歯茎の間にある溝で、空気に触れないところです。

健康な方の歯周ポケットの深さはわずか2~3mm程度のため歯周病菌がとどまることはできませんが、歯磨きをきちんとしていなかったり生活習慣が乱れたりすると歯茎が炎症を起こして腫れ、深さ4~5mm程度になります。

このくらいの深さになると歯周病菌が住み着きやすくなり、歯周ポケットに住み着いた歯周病菌が増殖して歯茎の下にある骨を溶かし始めるのです。

また、歯周病菌は歯垢(プラーク)を作ってへばりつきますが、歯に残った歯垢はやがて硬い歯石になって、歯磨きだけでは除去が難しくなってしまいます。

さらに、歯周病菌は常在菌であるため、完全に除去することはできません。

歯周病を防ぐためには、歯周病菌の量を体の免疫が対応できる程度に抑えることが大切です。

基本的には歯周ポケットが深くならなければ歯周病菌は増えないため、普段の口腔内ケアや生活習慣が重要になります。

歯周病に対する免疫力に影響する2つの要素

免疫力のイメージ

歯周病に対する免疫力には、生まれつきの体質と生活習慣の2つの要素が影響します。

ここではこれら2つの要素についてそれぞれ解説します。

生まれつきの体質

生まれつきの体質によって、歯周病に対する免疫力が左右されることがあります。

例えば親が歯周病にかかっている場合、自分も歯周病にかかる可能性が高いです。

これは遺伝的な要因のため自分でコントロールできませんが、歯科医院での定期検診を習慣づけていれば歯周病の発症リスクを抑えられます。

生活習慣

遺伝的な問題がなくても、生活習慣に問題があると免疫に影響し、歯周病にかかりやすくなることがあります。

歯周病に関係してくる生活習慣としては、以下の4つが挙げられます。

  • 食生活
  • 睡眠の質
  • ストレス
  • 喫煙

生活習慣が乱れていると歯周病の発症リスクが高まるため、思い当たる節がある方は少しずつ改善していきましょう。

食生活

食生活の乱れは虫歯や歯周病だけでなく、様々な病気を引き起こす原因となります。

ビタミンやミネラルが不足すると歯周病の発症リスクが高まるため、普段栄養バランスが崩れた食生活を送っている方は注意が必要です。

野菜を意識的に摂るように心がけるだけでも、歯周病を予防しやすくなります。

睡眠の質

睡眠の質が悪いと歯周病に対する免疫力を下げる可能性があります。

睡眠は体の修復や回復のために不可欠なもので、睡眠不足が続くと歯周病のリスクが高まります。

人によって適切な睡眠時間は異なりますが、7~8時間は確保したいところです。

また良い睡眠は時間だけでなく、規則正しく睡眠がとれているか、安定した睡眠がとれているかなどの要素も大切です。

タクシーの運転手や看護師など、不規則な生活スタイルになりやすい方は睡眠の質が悪くなりやすいため注意しましょう。

ストレス

慢性的なストレスは免疫力を低下させる要因となります。

急性的な心理ストレスも免疫力に大きく影響を与えるため、ストレスが溜まっているなと感じたら、自分に合った方法で適度にリフレッシュしましょう。

ストレス発散方法には以下のようなものがあります。

  • 運動をする
  • 日光を浴びる
  • 音楽を聴く
  • 動画を見る
  • 好きなものを食べる
  • 趣味に没頭する
  • 友だちと話す

自分なりにストレスと上手く付き合っていく方法を見つけることが大切です。

喫煙

喫煙は歯周病リスクを高める大きな要因です。

ある統計データによると、1日10本以上喫煙する人の場合は歯周病にかかるリスクが5.4倍にも上るとされます。

また喫煙をすると歯肉の腫れや出血があまり目立たなくなるため、歯周病が進行していることに気づきにくくなるリスクもあります。

歯周病だけでなく糖尿病や高血圧症などの生活習慣病を引き起こす原因にもなり得るため、禁煙するのが望ましいでしょう。

歯周病を発症すると全身に影響が及ぶ恐れがある

診断書と聴診器

歯周病を発症すると、全身に影響が及ぶ恐れがあります。

歯周病菌が出す毒素が血流に乗って全身に運ばれることで、以下のような疾患を発症することがあるのです。

狭心症・心筋梗塞(冠状動脈性心疾患)歯周病菌による細菌感染が起こると動脈硬化を誘導する物質が出ることで血管内にプラークができます。血液の通り道が細くなることで、血管が詰まってしまうことがあります。
脳梗塞脳の血管内でプラークができたり、頸動脈や心臓から血の塊が流れてくることで脳血管が詰まります。歯周病の人はそうでない人よりも脳梗塞のリスクが高まります。
関節炎・腎炎歯周病により作り出された炎症物質が血液に流れ込むことにより発症することがあります。
糖尿病歯周病により作り出された炎症物質が、血糖値のコントロールをするインスリンという物質の機能を低下させます。これにより糖尿病を悪化させる恐れがあります。
誤嚥性肺炎食べ物や飲み物が誤って気管から肺に流れていってしまった際、歯周病菌が一緒に入り込み肺炎が起こることがあります。
早期低体重児出産歯周病菌が血中を通り、胎盤を通して胎児に直接感染することで、低体重児や早産のリスクが高まるとされます。

歯周病を発症すると口腔内だけでなく全身にも影響が広がる可能性が高いため、きちんと予防することが大切です。

まとめ

歯周病の直接的な原因は歯垢(プラーク)ですが、口腔内トラブルが起きたり生活習慣が乱れたりすると間接的に歯周病を引き起こす恐れがあります。

歯周病に対する免疫力は生まれつきの体質と生活習慣によって決まります。

生活習慣が乱れていると免疫力が低下し、歯周病の発症リスクが高まるため、規則正しい生活習慣を意識することが大切です。

平山歯科医院では虫歯や歯周病を予防するための定期検診やブラッシング指導、歯石除去、フッ素塗布などを行っています。

歯周病を予防したい方はぜひ一度当院までご来院ください。

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