親知らずはなぜ生える?理由と治療法を解説

「親知らずが痛むけれど、抜いた方が良いのかわからない」「そもそも、なぜ親知らずは生えてきて、トラブルの原因になるの?」このように、親知らずについて疑問や不安を抱えている方は少なくないでしょう。
親知らずは、生え方によっては口腔内の健康に影響を及ぼすことがあります。
そのため、親知らずの性質を正しく理解し、ご自身の状況に合った適切な対応を考えることが大切です。
この記事では、親知らずが生える理由から、現代で引き起こされがちな問題、抜歯の判断基準や治療法について詳しく解説します。
親知らずはなぜ生えるのか?理由と現代との関係性

親知らずは現代人にとってはトラブルの原因となることが多いですが、かつては重要な役割を担っていました。
食生活の変化とともに、その必要性や生え方が変わってきたのです。
ここでは、親知らずの歴史的な役割と現代でも生えてくる理由について紹介します。
親知らずの役割と進化による変化
大昔の人々は、木の実や生肉など、硬く調理されていないものを主食としていました。
それらを噛み砕くためには、頑丈な顎と多くの臼歯が必要だったのです。
当時の人々は現代人よりも顎が大きく発達しており、親知らず(第三大臼歯)がきれいに生え揃うための十分なスペースがありました。
そのため、親知らずも他の歯と同様に、食べ物をすりつぶすための大切な歯として機能していたと考えられています。
現代人にも親知らずが生える理由
時代が進むにつれて、人々は食べ物を加熱調理したり、柔らかく加工したりするようになりました。
特に現代の食事は、柔らかいものが中心となっています。
硬いものを噛む機会が減ったことで、顎が十分に発達しなくなり、昔の人に比べて小さくなっている傾向にあります。
しかし、歯の数自体は進化の過程で変わらなかったため、親知らずが生えるためのスペースが不足しがちになりました。
これが、親知らずが斜めに生えたり、一部が埋まったままになったりする主な原因です。
顎の形や遺伝が生え方に影響することも
親知らずは一般的に、上下左右に1本ずつ、合計で4本生えます。
しかし、親知らずの生え方には個人差があり、生まれつき親知らずがない人や、数本しかない人もいます。
また、顎の大きさや形、歯の生える方向は遺伝的な要因も影響するといわれています。
家族間で親知らずの生え方が似る傾向があるのは、そのためです。
食生活だけでなく、こうした先天的な要因も、親知らずが問題なく生えるかどうかにかかわっています。
そもそも親知らずとは?名前の由来と文化的背景

親知らずという名前は、いつ頃から、どのようにして呼ばれるようになったのでしょうか。
その名称の由来には、昔の人の寿命や生活様式が関係する、いくつかの説が存在します。
ここでは、親知らずという名前の由来や、その特徴について紹介します。
親知らずという名称の由来
親知らずと呼ばれるようになった理由には、いくつかの説があります。
親が亡くなった後に生えるため
昔は平均寿命が短く、親知らずが生え始める10代後半から20代前半には、すでに親が亡くなっていることが珍しくありませんでした。
そのため、『親が知らない歯』という意味で名付けられたという説です。
親元を離れてから生えるため
昔も今も、親知らずが生える年齢は、親元を離れて自立し始める時期と重なります。
子どもが歯の生え変わりを親に報告することも少なくなり、『親が子の歯の萌出(ほうしゅつ)を知らない』ことから、この名が付いたともいわれています。
英語での呼び方と文化的な違い
親知らずは、英語では『wisdom tooth(ウィズダム・トゥース)』と呼ばれています。
日本語に訳すと『知恵の歯』となり、物事の分別がつく年齢になってから生えてくる歯、という意味合いで名付けられました。
トラブルメーカーのような印象のある日本語名とは対照的に、成熟の証として捉えられているのは興味深い文化的な違いといえるでしょう。
第三大臼歯としての特徴と役割
親知らずの正式な歯科用語は『第三大臼歯』または『智歯(ちし)』です。
親知らずは永久歯の中で一番奥、前歯から数えて8番目に位置します。
本来の役割は、他の臼歯と同様に食べ物を細かくすりつぶすことでしたが、現代ではその役割を十分に果たせていないケースが多く見られます。
親知らずが引き起こす問題

きれいに生えていて、きちんと機能している親知らずであれば、特に問題はありません。
しかし、現代人の小さな顎では、親知らずが原因でさまざまな口腔内トラブルが引き起こされることがあります。
痛みや腫れといった自覚症状だけでなく、他の健康な歯にまで悪影響を及ぼす可能性も考えなくてはなりません。
ここでは、親知らずが引き起こす代表的なトラブルを紹介します。
虫歯や歯周病の原因になりやすい
親知らずは歯列の一番奥に生えるため、歯ブラシが届きにくく、汚れがたまりやすい場所です。
磨き残しが多くなると、そこから虫歯や歯周病菌が繁殖し、炎症を引き起こすリスクが高まります。
また、親知らず自身だけでなく、その手前にある大切な第二大臼歯まで虫歯にしてしまうケースも少なくありません。
隣の歯を圧迫することで起きるトラブル
親知らずが生えるスペースが足りないと、斜めや横向きに生えてきて、隣の歯を強く押してしまうことがあります。
この圧迫が原因で、歯並び全体が乱れてしまったり、隣の歯の根が吸収されて傷んでしまったりする可能性があります。
押された部分に痛みを感じることもあり、長期的に見過ごせない問題に発展しかねません。
埋伏智歯による炎症や痛みのリスク
歯茎の中に完全に、あるいは部分的に埋まったまま出てこられない親知らずを『埋伏智歯(まいふくちし)』と呼びます。
特に、歯の一部だけが歯茎から顔を出している状態では、歯と歯茎の間に汚れが溜まりやすく、細菌が繁殖しやすい環境です。
『智歯周囲炎(ちししゅういえん)』と呼ばれる強い炎症を起こし、激しい痛みや腫れ、口が開きにくくなるなどの症状を伴うことがあります。
親知らずを抜歯すべきかどうかの判断ポイント

親知らずがあると聞くと、「すぐに抜かなければいけない」と考える方もいるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。
抜歯の必要性は、親知らずの生え方や周囲の歯への影響などを総合的に見て判断されます。
歯科医師と相談しながら、ご自身にとって最善の選択をすることが大切です。
ここでは、抜歯の必要性を判断する際のポイントを紹介します。
抜かなくても良いケース
親知らずが以下の条件を満たしている場合、急いで抜歯する必要はないと考えられます。
- 上下の親知らずがまっすぐに生え、きちんと噛み合っている
- 歯磨きが問題なく行え、清潔な状態を保てている
- 虫歯や歯周病になっておらず、痛みや腫れなどの症状がない
- 隣の歯や歯並びに悪影響を及ぼしていない
ただし、現在は問題がなくても、将来的にトラブルの原因になる可能性はあります。
そのため、定期検診を受けて、状態を確認していくことが望ましいでしょう。
抜歯を勧められるパターン
一方で、以下のような場合には、歯科医師から抜歯を勧められることが一般的です。
- 親知らずが原因で、歯茎の腫れや痛みを繰り返している
- 親知らずや、その手前の歯が虫歯になっている
- 親知らずが歯並びを乱す原因になっている
- レントゲン検査で、歯の根の先に病巣(嚢胞など)が見つかった
- 横向きや斜めに生えており、清掃が困難で将来的に問題を起こす可能性が高い
これらの症状を放置すると、悪化したり、他の健康な歯の寿命を縮めたりする恐れがあります。
レントゲンで判断できること
親知らずの状態を正確に把握するために、レントゲン撮影は不可欠な検査です。
レントゲン画像からは、肉眼では見えない多くの情報を得られます。
例えば、歯が骨の中にどのくらい埋まっているか、根がどのような形をしているか、下顎の骨の中を通る太い神経や血管にどれだけ近いか、などを確認できます。
これらの情報は、抜歯の難易度を判断し、治療計画を立てる上で非常に重要です。
親知らずの抜歯にかかる費用や治療内容

親知らずの抜歯を検討する際、多くの方が治療内容や費用について心配されることでしょう。
抜歯にかかる費用は、親知らずの生え方や抜歯の難易度によって異なりますが、多くの場合、健康保険が適用されます。
ここでは、親知らずの抜歯に関する費用や治療の流れについて紹介します。
保険適用となる条件について
親知らずの抜歯は、虫歯や歯周病、炎症など、医学的な必要性があると診断された場合、基本的に健康保険の適用対象となります。
一方、美容目的など、病気の治療と見なされないケースは保険適用外です。
保険が適用されると、窓口での自己負担額は1割〜3割に抑えられます。
抜歯の流れと治療後の注意点
親知らずの抜歯は、一般的に以下のような流れで進められます。
- 診査・診断:レントゲン撮影などを行い、抜歯の計画を立てる
- 麻酔:抜歯する部分に局所麻酔を行う
- 抜歯:歯を脱臼させ、骨から取り除く
- 止血:抜歯した部分を洗浄し、ガーゼを噛んで止血する
抜歯後は、腫れや痛みを抑えるための薬が処方されます。
感染を防ぐためにも、歯科医師の指示に従い、安静に過ごすことが大切です。
費用の目安
親知らずの抜歯にかかる費用は、親知らずの生え方によって変動します。
親知らずの状態 | 費用の目安(3割負担) |
まっすぐ生えている場合 | 2,000円~3,000円程度 |
横向きに生えている場合 | 2,000円~5,000円程度 |
歯茎に埋まっている場合 | 5,000円~10,000円程度 |
上記はあくまで目安です。
これに加えて、初診料や再診料、レントゲン撮影料、薬剤料などが別途必要になります。
まとめ
親知らずは、かつての人類にとっては必要な歯でしたが、食生活の変化により顎が小さくなった現代人にとっては、虫歯や歯周病、歯並びの乱れなど、さまざまなトラブルの原因となり得ます。
しかし、すべての親知らずを抜歯する必要はなく、その判断は生え方や口腔内全体の状況によって異なります。
平山歯科医院では、『歯医者』ではなく、何でも気軽に話せる身近な『歯医者さん』でありたいと考えています。
患者さん一人ひとりのお話をじっくりと伺い、レントゲンなどの詳しい検査結果をもとに、ご納得いただける治療方針を一緒に見つけていくことを大切にしています。
親知らずに関する痛みや腫れ、あるいは将来的な不安など、どんな些細なことでも構いません。
どうぞお気軽に当院へご相談ください。